遺言作成のススメ

~相続が「争族」とならないために~
遺産争族とならないために,遺言書を作成し,自分の最後の遺志を明確に遺すことをお薦めします。また,遺言書は,後に遺された家族に対する思いやりでもあります。
遺言等に関するお悩みを解決し,遺言作成にあたり適切にアドバイスします。

遺言作成のススメ

「遺産争続はお金持ちの家で起こるもの」
「財産が少ないから関係ない」
「家族は仲が良いので心配ない」
「なかなか死後のことを考えられない」

よく,このような話を耳にします。

しかし,相続争いは,遺産総額が1000万円前後の場合で最も多く起こっているようです。決してお金持ちだけの問題ではありません。

遺言書がないと,残された遺産をどのように分けるか,相続人間で話し合わなければなりません。一見仲の良い家族でも,これまでの不満や感情が噴出し,話し合いにならないことがあります。そのため,遺産分割調停など法的手続に発展し,その中で骨肉の争いが展開される・・・,まさに相続が「争族」になってしまうのです。

遺言書は,財産の分配などについて,その人の最後の遺志を実現するものです。残された人の生活を守り,紛争を未然に防ぐためにも,遺言書の作成を検討してはいかがでしょうか。

また,遺言書の作成は,民法上いくつかのルールがあります。そのルールに違反すると,せっかく遺言書を作っても無効になってしまいます。

遺言を理解し,確実な遺言書を作成するようにしましょう。そして,作成した遺言の内容が確実に実現されるため,遺言執行者を指定しておくことをお薦めします。

1 遺言とは…

遺言とは,自分の死後の財産処分方法を決めることです。

 

2 遺言の活用

Aは,妻Bと二人暮らしです。AB間に子はなく,Aの兄弟3人も亡くなり甥姪が8人います。
ところがAが入院し,Bは認知症が進んだため,高齢者施設へ入所しました。
Aは,妻Bが自分の亡き後,高齢者施設で十分な介護を受けながら生活ができるよう,資産を遺したいと考えています。また,ABがともに世話になったCさんに一定額の金額を遺したいとも考えています。

仮にAが亡くなれば,資産の3分の2はBにいきますが残り3分の1は顔も知らない甥姪にいくことになります。
遺産相続手続にも,多数の甥姪の押印を要することにもなります。
それゆえ,遺言が活用される場面です。

Aさんが遺言を残した結果…

Aは,上記遺言によって,

① Cさんに資産の一部を遺贈することができました。

② ①を除く,残りの資産全部を,妻Bに引き継がせることができました。

③ 遺言執行者により,相続手続を甥姪の押印を要さず,資産名義を変えることができました。

④ さらに,妻Bの成年後見申立を依頼しておいたので,成年後見人によって,Aの死後も妻Bの財産管理が法的に確約されました。 

 

3 遺言の効用

上記の事例から明らかなとおり,遺言により,遺言者本人の死後,家族の生活を確保することが可能となります。事例で紹介したAにとっては,遺言により,妻Bの生活確保が可能となりました。

つまり遺言の効用とは…

① 法定相続分とは異なる相続を実現させること

② 相続人以外の人に財産を遺すこと

が可能になるということなのです。

 

4 遺言の方式

遺言には,法律上いくつかの方式がありますが,一般的には普通方式と呼ばれる①自筆証書②公正証書③秘密証書遺言があります。

それぞれの遺言の方法とその相違点を以下のとおりまとめました。

1.自筆証書遺言
いつでもどこでも作成できる
①全部を自筆
②自筆で日付
③氏名を自署
押印 

2.公正証書遺言


方式ルールがある
証人2名の立会いが必要

 

 

 

3.秘密証書遺言

①署名・押印
②同一印章にて封印
③公証人及び証人2名の前で提出
④遺言者及び証人が署名

 


1.自筆証書遺言の作成

作成方法・・・方式が極めて厳格

法律上定められた方式に違反する自筆証書遺言は無効となってしまうので,注意が必要です。

(1)全部を自筆で書く ワープロ,代書はダメ
(2)自筆で日付を入れる 遺言優先前後を決める

※○月吉日の記載は無効

(3)氏名を自署する 通称,名だけも可
(4)氏名の下に押印する 認印,指印も可

2.公正証書遺言の作成

(1)遺言の内容

   弁護士と相談,公証人と事前打ち合わせ

(2)必要書類

  ① 遺言者の印鑑登録証明書

  ② 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本

  ③ 相続人以外の者に遺贈する場合,その者の住民票

  ④ 相続財産に不動産がある場合,その登記事項全部証明書及び固定資産評価証明書

(3)証人2人

(4)作成当日

   遺言者の実印と証人の認印持参

3.秘密証書遺言

秘密証書遺言とは,遺言書の「内容」を秘密にしたまま,その「存在」のみを公証人に証明してもらう方式の遺言です。
遺言書の内容を他人に知られないまま,自分が作成した遺言書の存在を明らかにすることができます。
ただし,公証人は遺言書の「内容」を確認するわけではないので,その内容が法律上定められた方式に違反する場合には無効となってしまいます。
また,自筆証書遺言と同じように,家庭裁判所の検認手続が必要です。
秘密証書遺言は,自筆証書や公正証書遺言と比べてそれほど多く利用されていません。

自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリット

多くの方から,遺言書は自筆にしたら良いか,公正証書(公証役場で作成)した方が良いか悩んでいる話をお聞きします。以下では,双方のメット・デメリットをまとめました。  

  自筆証書遺言 公正証書遺言
検認の要否 家庭裁判所の検認が必要 不要
費用の要否 不要(紙とペンさえあれば作成できる) 必要(公証人に支払う費用、但し高額ではない)
方式違反の可能性 方式違反だと無効になる可能性あり 公証人が作成するため無効となる可能性はほどんどない
内容の秘密 内容の秘密を保てる、但し発見されにくい 公証人や証人2名に遺言の内容が明らかになる
作成の手軽さ 手軽である 公証役場に出かけて作成するため少し煩雑
発見されやすいか 発見されにくい 検索サービスが提供されているため発見されやすい
隠匿・改ざん・廃棄・紛失の可能性  可能性あり 公証役場で保管されているため可能性は限りなく低い

では,自筆証書と公正証書のどちらを作成しておけばよいか?

双方にメリット・デメリットがありますが,
自筆証書遺言のデメリットは,

・形式や法律上の要件を満たさないと無効となってしまう。

・第三者による偽造・変造・紛失のおそれがある。

・発見されにくい・検認の必要があり手間 がかかる。

 そこで,安全かつ確実という意味で,第一には公正証書遺言の作成をお薦めします。

また,内容の秘密は,弁護士が証人(2名)となれば守秘義務があるので保てます。

5 遺言執行者

(1)遺言執行者とは・・・

遺言執行者とは,遺言書の内容を実現する人のことです。
遺言書は,作成しただけで満足してはいけません。その後の「執行」のことまで考えて,はじめてその目的が達成できます。遺産の分配には高度の専門的知識が必要とされます。遺言書の内容を確実に実現してもらうため,専門家である弁護士を遺言執行者に指定することをお薦めします。

また,何より遺言執行者が本人より先に亡くなってしまっては,せっかく遺言書を作成しても,不安が残ります。
当弁護士法人は,法人が遺言執行者となりますので,個人が遺言執行者になる場合の不安が解消でき,遺言者の遺志を最後まで継続的かつ安定して実現することができます。

(2)遺言執行者を指定するメリットは?

① 遺言執行者のみが執行できる事項 (必ず遺言執行者を選任しなければならない)

ア 遺言による子の認知

イ 推定相続人の廃除・その取消

ウ 財団法人設立のための財産の拠出

② ①の場合以外でも遺言執行者を指定することで,円滑かつ確実に遺言内容を実現することが可能になります。

例1

相続人ではない者に不動産を遺贈する場合,円滑に登記手続ができます。

遺言執行者が指定されていないと,登記手続に相続人の協力が必要となり,協力が得られない場合は訴訟を要することになります。執行者がいれば,遺言執行者と受遺者により登記手続を行うことができます。

例2

遺言執行者が指定されていれば,相続人は,相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができなくなります。

相続人が,遺言に反する目的で相続財産を処分したとき,遺言執行者がいれば,違反した処分行為は無効になります。

(3)遺言執行者の職務は?

① 遺言の有効性の確認・内容の解釈

② 相続人,関係者への就任通知

③ 相続財産の管理

④ 財産目録の調整と相続人に対する交付

⑤ 遺言の執行

※ 遺言執行者はその職務につき善管注意義務を負っており,注意を要する場合があります。

6 弁護士に遺言作成を依頼するメリット

弁護士に業務上の制約はない(遺言の作成から執行まで一貫して執行できるため遺言者の意思を確実に実現することが可能)
適切な法的アドバイスによって,「争族」を未然に防止する
生前の財産管理(任意後見契約等いわゆる3点セット)・死後の事務処理を含めたトータルな支援が可能

遺言は最後の財産管理というべきもの

生前の財産管理から遺言執行まで、

同じ人物が執行することが非常に望ましい

 

上記3つを実現できるのは弁護士しかあり得ない

7 費用

たとえば

定型的な遺言書を作成したい。資産は合計約5,000万円。弁護士に委任して遺言公正証書を作成したい。

a 遺言公正証書の作成の依頼のみの場合 (消費税込)

委任する際 手数料 110,000円
証人実費 22,000円

※但し,特に複雑又は特殊な事情がある場合は,協議により定める額を委任する際の手数料とする。
b 遺言執行者就任も依頼する場合 

報 酬 遺産総額の 0.5%~3%+(税)

※公正証書遺言作成費用(公証人へ支払うもの)、戸籍謄本・不動産登記簿謄本・固定資産税評価証明書の取り寄せ費用等の実費は別途負担とする。
※出張による遺言書作成の場合の日当は、半日1万1000円、交通費は実費別途負担とする。
※遺言執行時の不動産登記に係る登録免許税、司法書士手数料等の実費は別途負担とする。
※遺言により裁判上の手続を要する場合は別途負担とする。

自分のため,家族のため,遺言を遺したい方は,どうぞご相談ください。

当事務所が,あなたの意思を尊重する遺言作成のお手伝いをします。

弁護士法人龍馬