境界・隣接トラブル
相手方が近隣の方だからこそ,心理的に大きな負担を感じるでしょう。しかし,だからこそ同時に,冷静かつ的確な対応が求められるのです。解決に向けて一緒に頑張りましょう。
第1 境界問題
境界(筆界)は,私人間の合意によって定めることはできないし,自由に変更することもできません。当事者間において合意があったと主張されることがありますが,これは本来,個々の土地を区画する公法上の区分線たる境界ではないのです。
不動産の表示に関する登記は,所在,地番,地目,地積が登記されるのみで,実際には,その土地の位置,境界が明確にされていません。また,そもそも一筆の土地の境界線は隣地と接続しているため,それ自体客観的に認識できるものでも,利用によって一義的に決定されるものでもありません。したがって,所有者でさえ,土地の所在はわかっても,その境界が明らかでないものが多いといえます。
また,境界については,基本的に明認と保全に少なからず問題があるため,適当に耐久力があって移動することの少ないコンクリート製境界杭,またはブロック塀,樹木等によって,物理的に保全する必要があります。ただし,一旦保全された境界でも,自然的外部要因その他物理的または人為的条件により,長い年月の間に,いつしか変動・喪失することがあり,明認不能な状況に転移し,境界紛争を引き起こす原因となることもあります。
以上を前提に,境界問題に対処する必要があります。
それゆえ,いずれの案件も,当事者にはできる限り冷静な判断が求められます。
第2 近隣トラブル
日照問題,騒音被害などの近隣トラブルを考える際における大まかなポイントは,所有権相互間の調整,近隣者同士の相互受忍を如何に考えるかです。そのうえで,受忍限度を超える被害といえるかどうかが,近隣トラブルにおいて争点の1つとなることが多いといえるでしょう。
また,近隣トラブルを解決する上では,被害の証拠を収集することが重要になります。たとえば,騒音被害であれば,ボイスレコーダーで録音したり専門家に測定してもらうなどであり,住居にひそかに侵入されてものを壊されているのであれば,写真や監視カメラで撮影するなどです。さもなければ,相手方が事実をはぐらかすことがあるからです。
解決方法は,基本的には,近隣同士という特殊性を踏まえて,できる限り穏便な解決を目指します。ただし,事情によっては,管理会社,自治会,市役所,警察その他関係各所に相談して対応を求めることも検討すべきでしょう。