相続放棄
~相続の仕組みを理解しましょう~
「疎遠の兄が亡くなったら,弟の私に兄の借金の請求がきました」
あなたは,直ちに,兄の資産調査をし,債務超過であることが判明したら,相続放棄の手続をすべきです。
【突然の請求】
東京に住むAさん宛に,突然,通知が届きました。何でも,Aさんの異母兄弟に当たるBさんには,借金があり,Aさんは,Bさんの債務を相続したから,その借金を支払えというのです。Aさんは,両親の離婚に伴い,父親と離ればなれに暮らしていました。父親の再婚については、一切聞いておらず,ましてやその子どもであるBさんには,会ったこともありません。Aさんは,何で,見ず知らずの人の借金を払わなければならないのか,憤慨し,請求を無視することにしました。
Aさんの対応は正解でしょうか。
Aさんの対応は,残念ながら,間違いといえます。
AさんがBさんの兄弟として,相続した場合,当然に,Bさんの借金についても,支払う義務があります。
Aさんは,Bさんの借金を背負い込まないためには,相続放棄の申立をしなければなりません。
1 相続放棄とは・・・
(1)相続放棄とは,相続人が被相続人の死亡によって生じた相続の効果について,確定的に拒絶する意思表示です。
上の事例のように,相続人となった場合,被相続人の残した借金の支払いを免れることを目的として利用されます。
もっとも,被相続人のプラスの財産が多くても,相続争いなどに巻き込まれたくない場合にも利用することができます。
(2)相続放棄をすると,その相続人は,初めから相続人とならなかったものとみなされます。
親が莫大な借金を残して死亡した場合,その妻や子どもたちが,そのまま借金を背負い込んでしまうと,残された家族はその後の生活が立ち行かなくなってしまいます。
相続放棄の制度を利用すれば,このような悩みから解放されるでしょう。
ただし,相続放棄は,マイナスの財産を引き継がないだけでなく,プラスの財産も引き継がないことになります。被相続人の財産を一切承継しないことになるのです。
2 相続放棄を選択したら・・・
(1)相続放棄をするには,自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に,相続放棄の申述をしなくてはなりません。
上の事例で,Aさんは3か月以内に相続放棄の手続を取ることによって,借金の負担を拒否することができます。
(2)自己のために相続の開始があったことを知った時とは,原則として,➀被相続人の死亡など相続の原因事実と➁それによって自己が相続人であることを知った時をさします。
しかし,例外的に,相続財産は全くないと信じたことに相応の理由があれば,相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得る時から3か月以内に申述すれば,相続放棄ができます。
上の事例で,Aさんは,両親の離婚後,父親とは長年音信不通で,離ればなれに生活していました。父親の再婚の事実も知りません。ましてやその子どもであるBさんの存在すら知らず,見たことも会ったこともありません。当然,Bさんの死亡の事実や彼の財産関係も知る由もありません。
このような事情がある場合,Bさんが亡くなってから3か月経過した後に,Aさんのもとに請求書が届いてはじめて分かったにもかかわらず,すでに期間が経過したから相続放棄できないとなると,Aさんとしてはたまったものではありません。
そこで,例外的に,3か月後であってもBさんの借金が発覚した場合には,そのことを証明して相続放棄できる場合があるのです。
3 費用
弁護士費用
相続人1人から依頼を受ける場合 | 110,000円(消費税込) |
複数の相続人から依頼を受ける場合 | 1人につき55,000円(消費税込) |
※ 別途,実費が掛かります。
このように,突然債権者から請求を受けた場合には,速やかに専門の弁護士に相談することをお薦めします。
当事務所では,相続放棄だけでなく,限定承認,遺産分割などの相続に関するご相談に広くお応えします。