未払い賃金

会社(使用者)が残業代を支払わない場合,どうすればよいでしょうか。

法律上,労働者が残業した場合,使用者は割増賃金を支払わなければなりません。ですが,使用者も様々な理由を付けて,残業代の支払いに応じないことがあります。

よく見る事例を以下に挙げました。


毎月の給与に固定残業代として既に残業代を支給しているから,未払いではない

固定残業代として,真実支払われている場合は,改めて残業代を請求することはできません。

ただし,固定残業代として支払われている分(労働時間)以上の残業をした場合は,その部分について残業代を請求することができます。また,固定残業代についての就業規則等の定めが,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外・深夜の割増賃金にあたる部分とを判別することができない場合には,固定残業代が支払われているとは言えないため,その他に残業代に当たる手当の支給がされていなければ,残業代を請求することが可能です。

残業せざるを得なかったのは労働者の能力が低いため。だから残業代を支払う必要はない
使用者の指揮命令下で仕事をした時間は,基本的には,能力の如何を問わず,労働時間となります。したがって,残業代を請求することができます。
君は管理職だから,残業代は無しだ
労働基準法上の管理監督者に当たる場合は,残業代の請求をすることはできません。ただし,使用者が管理職であると主張していても,法律上はそれに当たらず,残業代を請求することができる場合があります。管理監督者に当たるか否かは,個別具体的事情によるため,身近な弁護士にご相談下さい。
2年も前に退職しているのに,いまさら残業代なんて時効だ

残業代の請求権は,消滅時効が2年とされています。そのため,2年以上前の残業代については,請求できません。ただし,場合によっては,残業代の未払いが民法上の不法行為に当たるとして,過去3年分に遡って請求できるケースもあります。請求の可否は個別具体的な事情によるため,労働契約書や就業規則,残業したことの証拠書類,残業代が支払われなかった経緯等を整理の上,身近な弁護士にご相談下さい。

なお,上記の通り,残業代請求権は,2年前のものについて,日々時効消滅してしまいます。そのため,早期に使用者に対して残業代を請求する旨の内容証明郵便を送付し,消滅時効の進行を止めることが必要です。(その後,任意に残業代が支払われない場合は,6か月以内に裁判上の請求をする必要があります。)

泣き寝入りしないために

上記のように,一見,使用者の理由がもっともであるように思えても,法的に手順を踏んで請求すれば,働いた分の残業代が支払われるケースも多くあります。泣き寝入りしないためにも,早期に弁護士に相談することが必要です。

通常,使用者に残業代の支払いを求めるには,以下の手続があります。

訴外の交渉,労働審判,訴訟です。

詳しくは解雇の有効性を争う方法をご覧ください。

(1)訴外の交渉

労働契約や就業規則に基づき,使用者と交渉する。

 

 

 

 

(2)労働審判

裁判所に労働審判を申立て,使用者に残業代の支払いを求める。 労働審判とは,裁判官や労働事件の専門家を交えた裁判所における話し合いの手続です。

(3)訴訟

裁判所に訴訟を提起し,使用者に残業代を請求する。

 

 

 

 


いずれの手続においても,自身がどれだけ残業したかの証拠がなければ,働いた分の残業代を求めることができません。日ごろから出退勤の時間を何らかの形で記録に残しておくとよいでしょう。

割増賃金

残業の種類 割増率
時間外労働(法定労働時間を超えた労働) 25%(※1)
深夜労働(22時から翌朝5時までの労働) 25%
休日労働(法定休日における労働) 35%(※2)
時間外労働+深夜労働 50%
休日労働+深夜労働 60%

※1 時間外労働とは,法定労働時間を超えた労働のことをいいます。法定労働時間を超えた労働とは,休憩時間を除いて1週間について40時間,一日について8時間を超えた労働のことをいいます。したがって,就業規則で1日の労働時間が7時間とされている場合,1日8時間働いたら,1時間分の残業代を請求する権利は生じますが,就業規則に別段の定めがない限り,割増賃金を請求することはできません。

なお,時間外労働時間が1か月で60時間を超えた場合は,割増率は50%となります。深夜労働が重なれば,割増率は75%となります。もっとも,中小企業には、当分の間、この場合の割増率の適用は猶予されます。

※2 休日労働とは,法定休日における労働のことをいいます。法定休日とは,労働基準法上,毎週少なくとも1日,または,4週間で4日以上与えなければならないとされている休日のことをいいます。したがって,就業規則で土日が休日とされている場合に,月曜日から土曜日まで出勤したとしても,土曜日の出勤は休日労働にはなりません。

なお,法定休日に8時間以上労働したとしても,休日労働には時間外労働の規制が及ばないため,8時間を超える労働についても割増率は35%であり,60%とはなりません。

残業代の計算式

1時間当たりの賃金額 × (時間外労働+深夜労働+休日労働をした時間数) ×(1+割増率)

1時間当たりの賃金額は,以下の計算式により算出されます。

月給÷1か月当たりの平均所定労働時間数

月給には,家族手当,通勤手当,別居手当,子女教育手当,住宅手当など,個人的事情を考慮して支払われている諸手当は含みません。また,臨時に支払われた賃金,1か月を超える期間ごとに支払われる賃金も含みません。

1か月当たりの平均所定労働時間数は,以下の計算式により算出されます。

(365日-年間所定休日数)×1日の所定労働時間数÷12

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